日本語プロフィシェンシー研究会「学会昇格記念シンポ」(10月1日)

「日本語プロフィシェンシー研究会」が10月1日に実施する「学会昇格記念シンポジウム」の詳細をお知らせいたします。どうぞご参加ください。

 

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日本語プロフィシェンシー研究会(JALP)はこの度10月1日をもって学会へと昇格することになりました。つきましては、盲目の政治学者モハマド・オマル・アブディン氏をお招きし、記念シンポジウムを開催いたします。パネルの詳細も併せてご覧ください。また、シンポジウム後の懇親会にもご参加くだされば幸いです。

 

会長 鎌田 修(南山大学)

 

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<日本語プロフィシェンシー研究学会昇格記念シンポジウム>

日 時: 2017年10月1日(日)13:00より

場 所: 関西学院大学梅田キャンパス 10階 1004教室

交通アクセス http://www.kwansei.ac.jp/pr/pr_001746.html

参加費: 会員 /非会員共に 無料

 

▼    プログラム:

13:00~13:15

会長挨拶「JALP ―これまでとこれから―」

鎌田 修(南山大学)

 

13:15~14:00わが妄想

基調講演「見えないからこそみえてきた日本語の面白さ」

モハメド・オマル・アブディン氏

学習院大学法学部特別客員教授)

 

14:00~14:50 アブディンさんとのOPIとそのまとめ

テスター:嶋田和子(アクラス日本語教育研究所)

 

14:50〜15:10

休憩:凡人社による書籍販売あり

 

15:10~17:00

パネルディスカッション

テーマ:「私の考えるプロフィシェンシー:表から、裏から」

司会:堤 良一(岡山大学)

由井紀久子(京都外国語大学)

   「プロフィシェンシーでとらえる日本語教師能力―実践知解明の手掛かりとして―」

   長谷川哲子(関西学院大学)「つなげるプロフィシェンシー ―接続表現の観点から―」

西村美保(清泉女子大学)「多文化共生時代の母語話者のプロフィシェンシー」

楊 帆(中国・海南大学)「ノンネイティヴから見たネイティブのプロフィシェンシー」

 

17:00〜17:10

閉会あいさつ

 

17:30 ~ 19:30

懇親会(申し込みはJALP HP上で)

▼ 基調講演者紹介

1978年、スーダンの首都ハルツームに生まれる。

生まれた時から弱視で、12歳の時に視力を失う。19歳の時、視覚障害者を支援する団体の招きで来日、福井の盲学校で点字や鍼灸を学ぶ。その後、ふるさとスーダンの平和を築くための学問を学びたいとの痛切な思いから、日本の財団から奨学金を受け、東京外語大大学院で研究者となる。犠牲者200万人、2005年まで20年に及んだスーダンの内戦の歴史を検証しつつ、2011年の南部独立後のスーダンを見守り、祖国平和のために発言を続ける。ブラインドサッカーの選手としても活躍しており、たまハッサーズのストライカーとして日本選手権で優勝を3回経験している。

http://www.poplarbeech.com/wagamoso/007244.html

 

▼ 発表要旨

由井紀久子(京都外国語大学)

「プロフィシェンシーでとらえる日本語教師能力―実践知解明の手掛かりとして―」  プロフィシェンシーの概念は、OPIや日本語能力試験等、言語遂行能力について使われることが多い。この概念を日本語教育能力のような仕事を遂行する能力についても用いることを考えてみたい。プロフィシェンシーは、言語運用能力として使われている文脈では、「課題遂行」と「熟達度」を含む概念である。日本語教育能力をプロフィシェンシー概念で捉えると、専門知識を運用・実践する能力ということになる。プロフィシェンシー概念を「課題」の観点から見るために、公開されているいくつかの日本語教壇実習のための評価表を検討すると、「語彙・構文の難易度は適切か」「ポーズを置いたり、ペースを調節したりするなどの調整がなされているか」等々、数多くの評価のポイントがあり、多焦点であることが分かる。「熟達度」の観点からは、「完全化」「問題解決への段階」「自己調整」「知情意の交流」の軸が抽出できる。これらを「分節化」「相互作用」「固有性」「類型化」「多元性」といった「現場の知」の構成要素と関連付けながら、日本語教師としての能力を検討してみたい。

長谷川哲子(関西学院大学)

「つなげるプロフィシェンシー ―接続表現の観点から―」

口頭表現に関わるプロフィシェンシーの要素の一つとして、どのぐらいの長さの談話をコントロールして話すことができるかという点がある。一定の長さと一定の構造を持った談話構成には多くの要因が関わるが、本発表では、コーパス資料をもとにした調査例の紹介を行い、日本語学習者および日本語母語話者の話し言葉における接続表現の使用を中心にした考察を行う。先行研究、ならびに日本語学習者および日本語母語話者の談話資料である「わたしのちょっと面白い話コンテスト」コーパスを使用した調査の結果、日本語学習者、日本語母語話者それぞれに特徴的な接続表現の使用傾向が観察されている。こうした使用傾向の差から、自分の経験としておもしろい話を語るというタスクの遂行に接続表現の使い方が関わっていることを示す。最後に、接続表現のような談話に関わる言語形式を扱った考察がプロフィシェンシー研究にどのように関わるか、問題提起を行いたい。

西村美保(清泉女子大学)

「多文化共生時代の母語話者のプロフィシェンシー」 本発表では、「在野の日本語教員」として活躍することが期待される日本語教員養成課程修了生が何を、どのように身につけることができるのかについて、サービス・ラーニングとしての日本語教育実習を中心に考えてみたい。  共生日本語教育実習とも呼ばれる、地域日本語教育でのボランティア活動をすることによって身につけられる能力は、多文化共生社会において有用なものである。サービス・ラーニングとしての地域日本語活動は、在住外国人との交流を通じて、人間関係を構築しつつ日本語の自然習得を支援するものであると同時に、異文化を理解し、自身の「やさしい日本語」調整力を養うことにもつながる。また、学生が地域日本語教室を企画し活動すれば、自分で教案を作って一人で授業を進めるのとは異なり、チームでの協働作業であると同時に、PBL(project-based learning)でもあり、課題発見力や計画力、主体性、実行力、規律性などといった社会人基礎力を身につける絶好の機会となる。

 

楊 帆(中国・海南大学)

「ノンネイティヴから見たネイティブのプロフィシェンシー」

外国人として、よく「日本語のどこが難しい?」と質問される。もちろん人によってそれぞれ難しく感じるところが違い、学習段階が異なれば、難しく感じる項目も変化して行く。日本語学習者からよく耳にする難しい事項には、「敬語」、「助詞」、「自動詞・他動詞」、「授受表現」、「指示詞」、「複合動詞」などなどがある。しかし、学習歴が長くなるにつれ、また使用頻度が高くなるにつれて、これらの難関はすこしずつ克服されていくものだと思われる。本パネルでは、たとえ上級の学習者でもなかなかマスターできず、難しく感じるものとして、スピーチレベルシフトとオノマトペの2つを挙げたい。スピーチレベルシフトは言語だけの問題ではなく、日本文化、日本人の人間関係の扱い方などさらに深いものと密接な関連がある。異文化を背景にした学習者はたとえ言語そのものが上達しても、日本文化的発想のしかたがわからなければ、言語能力もより上のレベルに到達しにくい。オノマトペの学習はただ語彙の習得という問題ではない。たとえ語彙として覚えたとしても、微妙なニュアンスの違いがあるため、自然習得以外の学習者にとってマスターすることは至難のわざである。これら2つのことをマスターできれば、話すことにおいて真のプロフィシェンシーが体得できるだろうと思われる。

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