今年もイーストウエスト日本語学校では、各クラスで俳句授業が行われ、その後クラス代表句が出され、校内俳句コンテストとなりました。大きな特徴としては、昨年もそうでしたが、多くの未入国の学生さん達がオンライン授業に参加するという状況での俳句づくりだったことが挙げられます。そんな中、学生さんから「中国語の季語」が飛び出しました。どんな状況でも、いろいろな工夫をしながら対話を楽しむ学習者、先生方、さすがですねえ~~~。
では、コンテストの結果の発表です。
第1席
焼き栗の香り漂う町歩き
テイ・センセンさん
第2席
うとうとと霜降りの朝二度寝する
キン・ウンヤさん
第2席
雨が降る小さい茸(たけ)は鳥の傘
ロ・ブンクンさん
第3席
街の木も秋物を着たお洒落だな
チン・ミーシェンさん
ドラマチック賞
君の顔秋の夕焼け時止まる
カン・メイテツさん
俳句コンテストの表彰は、例年通り「年末パーティー」にて行われました(12月17日)。1席のテイさんと2席のロさんは、オンライン参加で、残念ながら賞状は来日するまでお預けとなりました。一日も早く来日できる日が来ることを願っています。
そこで、今回は、オンラインで参加したテイさんとロさんの俳句を取り上げ、作った時の思い、そして、選句してくださった方々のコメントをいくつかお伝えしたいと思います(選句は、今年もご近所のお店屋さんや国際交流協会の方々、そして先生方のご家族など、さまざまな方にご協力いただきました)。
<焼き栗の香り漂う町歩き>
作者の思い:
子供の頃のことを思い出しました。子どもの頃はよく焼き栗のお店がたくさんありました。秋は、時々寒さを感じました。でも、そんな時は焼き栗の匂いで暖かく感じられます。いろんな場所を想像して作りました。
コメント:
*町を歩いていて、焼いた栗の香りがするとなんだか嬉しくなりますね。「香り漂う」という表現がすてきです。
*町歩きの楽し気な様子と町の情景が目に浮かぶし、さらに栗のおいしそうな香りまで、秋を楽しんでいる様子が目に浮かびます。私も栗の香りがする町で散歩したくなりました。
*焼き栗の香りから横浜の中華街を連想しました。栗を売る人の声や作者の気持ちの高揚が目に見えるようで、すばらしい句だと思いました。
次に、第2席になった俳句に関するいくつかのコメントと、「鳥の傘」に対する作者の思いと、作成過程での対話についてお話ししましょう。
<雨が降る小さい茸(たけ)は鳥の傘>
コメント:
*傘の下にいる鳥が小さくてかわいいですね。
*小さい鳥が茸(きのこ)の下で静かに雨宿りしている情景が浮かびます。絵本の1つのシーンのようでいいですね。
*雨が降って、小さい茸(きのこ)が生えてきて、その傘を鳥がさしている風景が見えました。かわいいですね。
作る過程での対話:
実は、ロさんは最初、下の句は「虫の傘」としたのだそうです。しかし、季語を考えたときに、「季重なり」に気づいた人が、「あ、秋の季語が2つ!(茸&虫)」と伝え、それからまたいろいろ考えた末、「鳥の傘」になったのだそうです。でも、ロさんの最初の発想通り「虫の傘」にしたほうが、イメージがぐっと膨らんだように思うのですが……。
今回の俳句授業において、「季語をめぐる対話」に関して、もう1つエピソードをお伝えしたいと思います。このクラスは、全員未入国で、毎日オンラインで授業を受けています。台湾出身のクレアさんは、台北の動物園に出かけて行き、こんな俳句を作りました。
<秋睏の 寝息静かな 動物園>
この俳句の季語は「秋睏」ですが、実は、これは中国語なのです。ここで、画面共有で「4枚の動物の写真」をもとに行われた<担任の森さんとクレアさん>の対話をご紹介しましょう。
ク:
「秋睏」って、中国語で、秋になると、気持がよくて眠くなるってことです。私は、動物園に行ってきました。動物も、み~んなよく寝ていました。幸せそうな感じでした。動物も「秋睏」ですね。
森:
へええ。中国語では、秋睏って言葉があるんですね。日本では「春眠暁を覚えず」っていう詩があるけど……。日本では、寒い冬が終わって暖かい春になると、よく寝られるから。でも、台湾は、秋なんだ。
ク:
はい。夏は暑いから、秋のほうが気温が下がって寝やすくなります。みんな眠くなります。眠くなって困ります。
来年の俳句授業は、みんなで日本の秋を味わいながら、作ることができるといいですね。1日も早く「留学生の入国許可」が下りることを願っています。