東中野にあるイーストウエスト日本語学校では、毎年冬になると、学内落語鑑賞会を実施します。コロナ禍の今年はどうするべきか、教務で何度も話し合い、会場とのやり取りを経て、1月28日、無事実施することができました。
・例年の参加者の半分にする。
・消毒、マスク等、コロナ対策は十分に行う。
・例年実施している学習者が「自分で作った小噺を披露する」のは中止する。
今年は、新型コロナ感染症の影響でさまざまな制約の中での日本語学習であり、生活上も大変なことが多かった留学生達が、桂扇生さんのお話を聞きながら、本当に楽しそうに笑っているのが印象的でした。
扇生さんは、今回はまず「おはようございます」の各国語バージョンからスタートしました。これは会場にいる学生さんを巻き込んでのやり取りです。そして、次に、落語に出てくる「あたし」から、日本語の人称の複雑さ、東京弁のことばを出しながら「ことばの面白さ」についての楽しいお話。そして、いよいよたくさんの小噺を聞かせてくださいました。反応は、学習者によってさまざまなことが、感想文からもわかります。「毒ヘビの小噺が面白かった!」という人もいれば、「猫の名前の小噺がいい!」という人もいたり~~~。そして、いつも会場が笑いに包まれるのは、次の小噺です。
お前、何やってんの?
兄貴に手紙書いてんの。
よせよ。お前字書けないじゃないか。
いいの。兄貴は字読めないから。
日本文化もいろいろな角度から学ぶことができます。着物の着方も教えていただくのですが、「左前」の話には、いたく感動したようです。
へえ、左を前にして着るのは、死んだ人に……。だから、会社が左前
っていうのは、経営が苦しい時のことなんだ。面白い!
二席の落語は「初天神」と「寿限無」です。学生さん達は、「登場する複数の人物を声の高低・しぐさ・表情・道具などで演じ分けながら、物語を進めて」いることに感動していました。
11時30分に落語は終了し、その後は学校に戻って4時間目の授業を受けることになります。この時間は、振り返ったり、感想を書いたりする貴重な1時間となります。その時に書いた感想文を教務から受け取りました。許可をもらいましたので、記事の最後にいくつかご紹介したいと思います。
※その場で書いてもらって集めました。学生さんが書いたままで、教師は一切手を加えていません。
この「イーストウエスト日本語学校 落語鑑賞会」が始まって四半世紀経ちました。きっかけは、「ビジネスマン対象の講演会」での名刺交換でした。私は講師として「異文化交流のススメ」といったテーマで、留学生の話をした後だったので、すぐに「えっ、落語家でいらっしゃるのですね!あのう、今度留学生に落語を聞かせていただけませんか?」と不躾なお願いをしたのでした。そして、イーストウエストを辞めてからも毎年扇生さんとのお付き合いは続き、今年もたっぷりすてきな落語を楽しませていただきました。
今年はコロナ禍で、下手をすると内向きになりがちですが、イーストウエスト日本語学校では3月中旬からオンラインの同期型授業を開始、オンライン進路指導も早くにスタートしました。それは、
・学習者の学びを止めない
・学習者の気持ちに寄り添う
・学習者の人生に向き合う
ことを大切にして、専任講師も非常勤講師も一丸となって「学びの共同体」の中で行動し続けたからこそ可能になったのだと言えます。日本語学校には「さまざまな活動」があることをお伝えしたく、今年の落語鑑賞会の記事をアップしました。
※感想文の中に「2回目」とあるのは、2年間のコースですが、中級または上級から入学した留学生は、2回見る機会があることになります。