「住みよい日本社会」をつくるために、「知ること」から始めませんか ~『外国にルーツを持つ女性たち 彼女たちの「こころの声」を聴こう!』 より~

12月12日に「『外国にルーツを持つ女性たち 彼女たちの「こころの声」を聴こう!』に込めた思い」というタイトルで、アクラスに記事を書きました。そこには、次のように記しました。

2 外国にルーツを持つ女性たち

マジョリティである日本人のちょっとした一言による苦しみ、温かい支援によって「苦悩」を切り抜けた経験……こうしたことを多くの方々に知っていただき、本当の意味での「多文化共生社会とは何か」について考えるきっかけにしてほしいと思い始めました。日本語教育関係者ではなく、一般の方々に一人でも多く、「外国にルーツを持つ女性たち」の思いを知って、「何が、今、日本社会で起こっているのか」について気付いていただきたいと考えました。

ここで、3つの記事について紹介させていただきます。

 

①ヤフーニュース(2021.1.1 )

 https://news.yahoo.co.jp/…/suzukitak…/20210101-00215583/

執筆者の鈴木氏は、日本社会の今の課題について述べ、その上で「知ること」の大切さについて触れ、「つながること・つなぐこと」の重要性、日本語教室の役割について、次のように記しています。

 

外国人材が、日本社会で生活していけるようになるには、つなぐ場や人がどうしても

必要だということである。その意味において、日本語を学ぶ場である「日本語教室」

は、外国人材と地域や住民をつなぐ場としても実は重要な役割を果たしているのである。

 

そして、以下のように締めくくっています。

 

筆者は、同書を読んで、日本で最近論じられる労働者としての外国人材の視点を

超えて、日本社会において外国人材を考える際に、生活者としての外国人材の意味・

視点、日本語や日本語教室の重要性、外国人材を地域や住民につなぐ仕組みの必要性、

地域の未来の人材としての若い外国人材など多くの新しい視座や考慮すべき点を得る

ことができた。また日本社会において、今後外国人材の問題や課題を考える場合に、

これらの視点等がこれまで以上に重視されるべきだといえるだろう。

 

②日本語ジャーナル「コラム」

「日本語教師を目指す人に読んでほしい一冊ー『外国にルーツを持つ女性たち 彼女たちの「こころの声」を聴こう!』

https://nj.alc-nihongo.jp/entry/20210110-kokorono-koe

          

インタビューを受けての記事ですが、私が伝えたいことを短い文章に入れ込んでくださっています。そのことは、4つの見出しを見てもよくわかります。

 

・次世代の地域社会を担う女性や子供たち

・実名で語り伝えたい誇りある人生

・「こころの声」を聴くことにつながるOPI

・学習者との向き合い方を考えることから始める

 

③「秋田さきがけ」新聞(2021.1.7 朝刊)

3 合成写真

記事の中では、「北川さんと信頼関係を築いてきたこと」に触れられています。私が十数年にわたったライフヒストリーを書くことが出来たのは、まさに「のしろ日本語学習会」を主宰する北川さんとの長年にわたる「対話」があったことがあります。能代の町に住んでいるわけではない私が、これだけ深く皆さんの思いに寄り添ってこられたのは、北川さんからいただくメール、電話、新聞記事、皆さんの作品などがあったからなのです。

 

さらに、北川さんはOPI(Oral Proficiency Interview)に魅力を感じ、調査を始めた翌年2008年12月末には、4日間も東京に泊まって「OPIワークショップ(71期)に参加しました。その時のワークショップのトレーナーは私だったことから、さらに深い関係性が構築されていきました。

一回のインタビューで人生を語ってもらうのではなく、長い年月をかけてたくさんのインタビューを実施し、同時に北川さんとの「対話」を積み重ねていく中で、今回の本が生まれたことを、改めて記しておき

1999マニュアル

たいと思います。北川さんから頂いたメール、資料は膨大なものになり、それがまた私の「宝もの」となっています。

また、たくさんの方々から感想をいただいています。ここで、いくつか皆さんと共有したいと思います。(長い文章となっていますので、一部を抜粋して紹介します。)

 

【日本で仕事を続ける中国出身の方 】

FB→ https://www.facebook.com/xiaoqing.gao.5

 

ご結婚や何らかの形で秋田県藤里町へ移住した外国人女性達が日本語、更に方言との苦闘、奮闘する姿。

懸命に彼女たちへ日本語を教える、いえ、日本語を教える以上の仕事として「人財」育成に全力を尽くし取り組み続ける「のしろ日本語学習会」の主宰北川先生。

彼女たちを御理解、温かく見守り続けるご家族の方々。

特に印象深いのは韓国からの幸子様、来日初め近隣家族の喧嘩で聞こえた馬鹿やろうという言葉の意味をご義母様に教わり、自分もしょっちゅう悪戯をする猫や嫌な事に使うようになり、それを問題視したご義母様は近隣の方々へ、家の幸子が何でも真似るから喧嘩する時馬鹿やろうとかあんまり大きな声を出さないようにお願いされた。

彼女たちの最初の日本語を勉強する目的は、ご家族や生まれてくる子供とコミュニケーションできるようになりたいと、主に生活者として言葉の壁を破りたい・・・が、上達するほど友達ができて楽しみが増え、社会参加への道が広がり、教室での勉強に加え厄払い体験、着付教室通い、日本語コンテスト優勝、資格取得等などを通じてキャリア形成にも繋がりました。

違うきっかけで、仕事で来日した私ですが、彼女たちの逞しい姿に脱帽します。日本でのスタートポイントが異なるだけで、第2故郷となってきた日本社会に必要とされることを幸せに思うことに違いないでしょう。人生の中で、皆んなスタートポイントや夢が異なっても構わない、日本をゴールイン地点じゃなく再出発点だとして頑張り続ければ多文化共生社会の形成や維持に力を捧げる一員になれると深く感銘を受けました。

北川ご夫妻は、さっそく能代市長を訪問し・・・

北川ご夫妻は、さっそく能代市長を訪問し・

 

 

【日本語教師養成講座に通っている方】

第一の感想は、日本語教師の任務は、『深く重い』ということです。これまでも、軽く考えていた訳ではないのですが、これほどまでに、学習者さんの「人生にコミット」するものなのか…と、責任の重さを感じました。同時に、それだけのやりがいのある仕事、とも思えました。

   ・・・中略・・・

日本語教師は、活用がどうのこうの、発音がどうのこうの、も大事ですが、より深いところの心の声(聲)に耳を傾ける仕事。外国人集住都市、散在都市の問題、日系人のアイデンティティーの問題、いずれも教科書で勉強しましたが、実際のところ、こういうことなのか…というのがリアルに感じられました。

これから日本語教師として活動を始めようとするときに、学習者さんにどう向き合えばよいのかを教えてくれる、まさにぴったりの本に今日出会えた、と感謝しています。

 

 

【教師歴30年の日本語学校に勤める日本語教師】

 

私が外国にルーツを持つ人たちが周囲に増えてきたと感じ始めたのは今から30年余り前のことです。そのころ私は日本語教師になろうと準備を始めていました。ボランティアにも参加して、都内のある市の国際交流協会の立ち上げにも参加しました。当時からその方たちのルーツを大切にしなければという思いや、その方たちのお子さんにもお父さん、お母さんのルーツを理解してもらいたい、更には、その言葉や文化を自分のものとして捉えてほしいという思いを持っていました。日本語教師になってからも、その考え方をずっと持ち続けてきました。でも、その方たちに寄り添うことができていたかと思うと、そうではなかったと思います。あくまでも自分の都合中心でした。

 

「外国にルーツを持つ人たちを日本社会に迎え入れて、一緒に生きていくには、その人達のルーツを尊重しなければならない。その上で少しでも日本で暮らしやすいように協力しよう」この考え方そのものは間違ってはいないし、そのようにしてきたと思うのですが、彼女たちのルーツはその出身地だけではなくて、同等に日本もルーツだということ、或いは、少なくともそのように感じてもらえる環境が必要だということに考えが及んでいませんでした。では、「その場所も自分のルーツだと思える環境」というのはどのようなものなのでしょうか。「この社会に自分は必要とされている」とご本人が感じられるような社会参加ができる環境、この本を読むとその重要性を痛感します。

・・・後略・・・

「秋田さきがけ」(2021.1.7朝刊)

※掲載許可をいただいてあります。

「秋田さきがけ」2021.1.7

「秋田さきがけ」2021.1.7

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